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東京地方裁判所 昭和22年(ワ)2353号 判決

原告 日本機械輸入協会

被告 浅野栄七 外一名

一、主  文

被告浅野栄七は原告に対し別紙目録<省略>記載の(ロ)の家屋を明渡し且つ昭和二十二年三月十二日以降右明渡済に至る迄一ケ月金二十五円の割合による金員を支拂うべし。

被告神保秀男は原告に対し別紙目録記載の(イ)の家屋を明渡し且つ昭和二十二年三月十二日以降右明渡済に至る迄一ケ月金三十八円の割合による金員を支拂うべし。

訴訟費用は全部被告等の負担とする。

此の判決は原告に於て担保として被告に対し、夫々金七万円を供託するときは仮に執行することを得。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文第一乃至第三項同旨の判決並に仮執行の宣言を求むる旨申立て、請求の原因として、原告は昭和二十一年九月九日機械等の輸入を目的とする会社十八社を以て組織された団体であるが昭和二十年勅令第五百四十二号(ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件)に基き制定せられたる閉鎖機関令(昭和二十二年勅令第七十四号)第一條第三條、昭和二十二年大藏省商工省告示第四号により昭和二十二年七月一日閉鎖機関に指定せられ其の一切の業務を指定業務とせられ(右指定業務は同年九月十一日大藏省商工省告示第二十六号を以て廃止された)、同令第八條第九條第十條並に前示昭和二十年勅令第五百四十二号に基き制定せられたる閉鎖機関整理委員会令(昭和二十二年勅令第七十五号)により閉鎖機関整理委員会に於て右指定業務並に原告協会の特殊清算を行うこととなり茲に同委員会は原告を代表して右特殊清算を行うに付一切の裁判外又は裁判上の権限を有するに至つたが昭和二十三年八月二十一日政令第二百五十一号により閉鎖機関令改正せらるゝや原告は指定日を以て解散し指定業務及清算の目的の範囲内に於て存続することゝなり閉鎖機関整理委員会は特殊清算人として原告を代表して其の財産の清算を爲すこととなつた、然るところ之に先立ち原告は昭和二十二年三月十二日別紙目録記載の(イ)(ロ)の家屋二棟を訴外石井信太郎より買受け之を所有するに至つたが、(一)右(イ)(ロ)の家屋は石井信太郎の所有当時同人に於て昭和二十年四月頃被告浅野栄七に対し、(ロ)の家屋を賃料一ケ月金二十五円にて、被告神保秀雄に対し(イ)の家屋を賃料一ケ月金三十八円にて孰れも期間の定なく賃貸し被告等は夫々右家屋に居住していたので、石井は原告に右(イ)(ロ)の家屋を賣渡すに当り昭和二十二年二月九日被告両名との間に於て前記各賃貸借契約を合意解除し被告等は同年三月一日迄に(イ)(ロ)の家屋を夫々明渡すべき旨約定していたものであるから其の後前記日時に所有権を取得した原告に対しては何等対抗し得べき権原なくして之を占有しているものである、(二)仮りに石井と被告両名との間に右の如き合意解除の事実なしとすれば原告は右各賃貸借契約の貸主たる地位を承継したことになるのであるが原告の特殊清算人たる閉鎖機関整理委員会は原告を代表して閉鎖機関令第十三條に從い昭和二十二年十月二十八日各被告に到達した本件訴状を以て前記各賃貸借契約の解約申入を爲したから同日以降六月を経過した昭和二十三年四月二十八日限り被告等との右各賃貸借契約は終了したものである、(三)又本件訴状を以てする解約の申入が効力なしとするも昭和二十四年三月二十五日の本件口頭弁論に於て各被告に対し閉鎖機関令第十三條による解約の申入を爲したから其の後六月を経過した同年九月二十五日を以て終了するものである、(四)仮に閉鎖機関令第十三條が期間の定ある賃貸借の場合に限り適用あり本件期間の定なき賃貸借に適用なしとすれば同令第十二條により本件訴状の送達を以て解除の意思表示を爲したから昭和二十二年十月二十八日を以て前記各契約は解除せられたものである、然らずとするも前記口頭弁論期日に於て同令第十二條による解除の意思表示を爲したから昭和二十四年三月二十五日解除の効果を生じた、因て被告等は夫々(イ)(ロ)の家屋を明渡すべき義務があるにも拘らず其の明渡をしないから之が明渡並に原告が(イ)(ロ)の家屋の所有権を取得した昭和二十二年三月十二日以降各明渡済に至る迄前記各賃料相当の損害金(原被告等間に賃貸借成立したりとせば其の終了迄は賃料)の支拂を求むる爲本訴に及んだと述べ、被告の答弁に対し、本件(イ)(ロ)の家屋に付昭和二十二年三月十二日市川保雄名義による所有権移轉登記の爲されたことは認めるがこれは原告が人格なき社団にして原告名義の登記を爲し得ない爲、信託の形式を以て当時原告協会の総務部長であつた市川保雄名義にて登記したのであつて(イ)(ロ)の家屋の所有者は原告協会である、而して被告等は本件家屋が石井信太郎の所有当時既に賃貸借終了し得るものであるから原告名義による登記の欠缺を主張する正当な利益を有せざるものである、仮りに石井所有当時賃貸借終了せずとするも被告等は原告が(イ)(ロ)の家屋を買受けた事実を知悉し居り原告よりの明渡の交渉にも應じて來たものであり又原告が閉鎖機関なる以上実質上法律上原告の所有に属する本件家屋二棟も当然閉鎖機関令による特殊清算の対象となり他の法令又は契約の如何に拘らず被告等は原告を代表する特殊清算人の要求により之を引渡すべき義務あること閉鎖機関令第七條第一項により明であるから原告名義の登記の欠缺を主張して之が引渡を拒むことを得ない、又閉鎖機関たる原告が其の代表者である特殊清算人により前記各賃貸借契約の解約申入を爲すに付てば借家法第一條の二所定の正当の事由を要せざることは次の理由により明である、即ち原告は連合国最高司令官の要求に基き其の解体を迅速に実行する爲閉鎖機関令の定めるところにより解散の上特殊清算人により特殊清算を爲すべきものとして指定されたものであつて、特殊清算は連合国最高司令部の千九百四十六年十月五日の閉鎖機関対金融緊急措置に関する覚書中其の第三項によれば閉鎖機関の閉鎖時に未履行の契約及び協定は凡て連合国最高司令官による別途の指示のない限り廃棄されたものと看做されるのであり右覚書の趣旨に從い爲さるべきものであつて、之が爲閉鎖機関令第十二條は閉鎖機関を当事者とする双務契約に付ては閉鎖機関及其の相手方が指定日に於て未だともに其の履行を完了していないときは特殊清算人の選択により契約の解除又は相手方の履行を請求することが出來る旨を規定し原則として特殊清算人の選択により直に契約解除を爲し得るのであるが賃貸借契約に付ては右原則により即時解除を爲し得るものとするは現在の社会状勢に適しないので例外として同令第十三條に於て借家法の適用ある地域に付ては六月前に解約の申入を爲し得る旨規定したものである、而して同條に於ては單に借家法第三條第一項によるべき旨規定したのみで借家法の他の規定の適用に付明示せざるは之を適用しない趣旨に出たものである、從て特殊清算人が原告の特殊清算の一環として右閉鎖機関令の規定に從いて爲す本件解約の申入に付ては借家法第一條の二所定の正当の事由の有無を問わないものである、仮りに正当事由の存することを要すとするも前記覚書の趣旨並に之に基き閉鎖機関整理委員会が特殊清算人として閉鎖機関令第十條所定の現務の急速なる結了の爲、必要と認めたる以上本件解約の申入の意思表示は其れ自体当然事由を具有するものと謂うべきである、而も本件家屋二棟を原告が石井より買受けたのは原告協会勤務の從業員中の引揚者並に戰災者の宿舎に充てる爲であつて其の必要は今尚存するのであるから右事由も正当事由として考慮せらるべきであると述べた。<立証省略>

被告両名訴訟代理人は請求棄却の判決を求め答弁として、原告が昭和二十二年七月一日大藏大臣及商工大臣より閉鎖機関として指定せられ、其の主張の如き経過により特殊清算人たる閉鎖機関整理委員会に於て原告の特殊清算を爲すに至つたこと、本件(イ)(ロ)の家屋が元石井信太郎の所有に属し同人より昭和二十年四月頃被告浅野栄七が(ロ)の家屋を、被告神保秀男が(イ)の家屋を孰れも原告主張の如き約旨にて賃借し現に居住占有していることは認めるが、昭和二十二年二月九日右石井と被告両名間に於て各賃貸借契約を合意解除し被告等が同年三月一日迄に(イ)(ロ)の家屋を夫々明渡すことを約したこと、並に原告が右石井より(イ)(ロ)の家屋二棟を買受け所有するに至つたことは之を否認する、本件二棟の家屋は訴外市川保雄が買受け昭和二十三年三月十二日同人名義を以て所有権移轉登記を了しているので仮りに原告が買受けたものとしても原告名義の登記なき以上原告は其の所有権取得を以て被告等に対抗し得ない、從つて前記各賃貸借契約の貸主の地位を承継したものとして被告等に対し有効に右契約の解除乃至解約の申入を爲すことを得ない。

仮りに原告が(イ)(ロ)の家屋の所有権取得を以て被告等に対抗し得るものとするも原告主張の閉鎖機関令第十三條による解約の申入並に同令第十二條による解除の意思表示は次の理由により凡て無効である、蓋し同令第十二條は閉鎖機関並に其の相手方が指定日に未だともに履行を完了していない双務契約に付定められた一般的規定であつて、右契約が賃貸借なる場合に於ては特に賃借人を保護する必要ある爲同令第十三條の特別規定を設けたものと做すべきであるから賃貸借契約に付いては同令第十二條の適用はないものと謂うべく同條に基く解除を爲すこと得ない。又閉鎖機関に対する特殊清算の趣旨とするところは、要するに迅速に現務を結了して債務を弁済し解体するに在つて之が爲資産を換價する要あること明であるが清算遂行に当つては一般社会経済秩序の保持を旨とし特に少額債権者の利益を害さぬ様努むべきことは同令第十一條第二項の規定に徴し明であるところ、閉鎖機関の所有家屋は凡て明渡を得た上換價すべしと爲すが如きは、借家人の保護を顧みざる処置で、到底容認し得ないのみならず、特殊清算人としては被告等が居住している儘(イ)(ロ)の家屋を賣却する等の手段により換價すれば事足り、明渡を得た上有利に換價するに非ざれば債務の弁済を爲し得ざる等の特別事由のない限り同令第十三條による解約の申入を爲し得ざるものと謂うべきである、原告に於て右特別事由の存在を立証せざる限り其の解約申入は凡て効力を生ずるに由なきものである旨陳述した。<立証省略>

三、理  由

別紙目録記載の(イ)(ロ)の家屋二棟が元訴外石井信太郎の所有に属し昭和二十年四月頃被告浅野栄七に於て(ロ)の家屋を賃料一ケ月金二十五円にて、被告神保秀雄に於て(イ)の家屋を賃料一ケ月金三十八円にて孰れも期間の定なく右石井より賃借して現に居住占有していることは当事者間爭がない。而して原告が其の主張の如き十八会社より成る団体であることは被告の明に爭わぬところであり右団体が構成員たる会社より独立したる商号を有し居ることは本件弁論の全趣旨により明であり、又証人市川の供述により成立の眞正を認むべき甲第二号証によれば原告が其の執行機関を有することを認め得べく、此等と原告が昭和二十二年七月一日大藏省商工省告示第四号により閉鎖機関として指定せられたる事実を併せ考えると原告は所謂人格なき社団なりと認むべきである。仍つて先づ原告が昭和二十二年三月十二日石井信太郎より前記(イ)(ロ)の家屋二棟を買受け其の所有権を取得したる旨主張するに対し被告等は之を爭い訴外市川保雄が右家屋二棟を買受けたものである、仮りに原告が買受けたものとしても登記を欠缺するを以て被告等に其の所有権を以て対抗し得ない旨主張するので此の点より審究する。

成立に爭なき甲第一号証並に前記甲第二号証及証人市川保雄同石井信太郎同字引重永の各証言を綜合すると原告は昭和二十二年三月十二日原告協会の從業員中引揚者戰災者等の宿舎に充てる爲(イ)(ロ)の家屋二棟を所有者石井信太郎より代金二十三万円にて買受けたが原告が前記の如く人格なき社団である爲原告名義を以て其の所有権移轉登記を爲すを得ないところから当時原告協会の総務部長であつた市川保雄個人名義にて登記すべく同人をして石井との間に市川を買受人とする賣渡証書(甲第一号証)を作成せしめ之を以て同日市川保雄を買受人として東京区裁判所芝出張所受付第六五〇号を以て右家屋二棟の所有権移轉登記を経た(市川保雄名義にて登記ありたる事実は当事者間爭ない)が原告が法人格を取得したときは原告名義に登記すべき旨市川との間に約定し居りたること(甲第二号証)が明であるから、右事実よりするときは原告が前記の如く人格なき社団である爲右家屋二棟の所有権は市川の承諾の下に登記簿上同人名義と爲して置いたのに過ぎず其の実体は即ち原告協会の所有に属すと言うべきである。而して原告協会が其の主張の如き経過により閉鎖機関として指定せられ閉鎖機関整理委員会に於て特殊清算人として原告協会の特殊清算を開始するに至つたことは当事者間爭のないところであるから本件(イ)(ロ)の家屋は閉鎖機関令第七條第一項の規定に依り閉鎖機関の所有に属する財産として特殊清算の対象となりたるものと解すべく、前認定の如く本件家屋が実質的に原告所有の財産と認めらるゝ以上原告名義の登記なき一事を以て前記規定に所謂閉鎖機関の所有財産に非ずとして特殊清算より除外すべき理由は何等存しないと謂うべきである。而して以上認定の如く(イ)(ロ)の家屋が特殊清算の対象たる以上閉鎖機関令第七條第一項の定むるところにより其の登記の有無乃至登記簿上の所有名義如何に拘らず被告等は本件物件が原告の所有に属することを知れるものであるから、(被告等が此の事実を知つて居ることは証人浅野花子、市川保雄、石井信太郎の供述により明である)所持人たる被告等は其の旨を特殊清算人に報告する義務を負担し若し特殊清算人の要求あるときは同條項の規定により遅滞なく之を引渡すことを要する。即ち特殊清算人に於ては閉鎖機関令第七條の規定に基き他の法令又は契約の如何に拘らず其の引渡請求権を有するものと解すべく(此点は破産法第百四十三條の規定に対比し特殊清算人は破産管財人より強力なる権利を附與せられたるものなること明である)從て原告の代表者たる特殊清算人が原告を代表して、本件(イ)(ロ)の家屋を保持する被告等に対し其の引渡を請求する以上(但し此がためには後段摘示の如く賃貸借の解約を必要とする)被告等は原告名義の登記なきことを主張して其の所有権の対抗力を爭い得ざるものと謂わねばならぬ。然のみならず、証人市川保雄、石井信太郎、字引重永、浅野花子の供述を綜合すれば、前段認定の如く原告は石井より本件家屋を買受けたのであるが、其の賣買に先立ち石井より被告等に対し本件家屋を原告に対し賣却すべき理由を以て明渡を求めたこと、原告は買受後に社員をして被告等に対し繰返して明渡を求めたるところ被告等は本件家屋が原告の所有に帰したることを認めつゝも唯だ移轉先なきことを以て明渡に應じなかつたに過ぎずして、原告の所有権者乃至は賃貸人たることを否認し又は登記の欠缺を理由として明渡を拒んだ形跡は何等存在しないことを認むるに十分であるから、以上の事実よりすれば被告等は原告の所有権取得と賃貸人の地位の承継とを認め、原告と被告等との間に夫々賃貸借関係の存在することを承認したものと認むべきであるから、其の後本訴に至つて登記欠缺を主張して原告の所有権者乃至賃貸人たることを否認し得ざるものと謂わざるを得ない。仍つて次に原告が被告等に対し(イ)(ロ)の家屋の明渡を求める理由に付考覈するに原告は第一に石井信太郎と被告等間の前記各賃貸借契約は昭和二十二年二月九日合意解除せられ被告等は同年三月一日迄に明渡すことを確約しているから原告に対しては固より正当なる占有権原なくして(イ)(ロ)の家屋を占有しているものなる旨主張し、証人石井信太郎同字引重永は原告の右主張に副う如き供述をしているが証人古川誠助同浅野花子の各証言、被告神保秀男本人訊問の結果に対比して考えると石井、字引証人の前示供述の結果は眞実に符合せるものとの心証を得しむるに足らず、他に右主張を肯認するに足る何等の適確な証拠はない。仍つて原告の右主張は採用し得ない。而して賃貸借の承継のあつたこと前段認定の通りであるから進んで原告の解約申入の主張に付按ずるに原告の特殊清算人が本件(イ)(ロ)の家屋の明渡を請求するには前示引渡に付説示したるところに拘らず閉鎖機関令第十三條の規定により解約の申入を爲すの要あるものと解すべく、本件訴状が昭和二十二年十月二十八日被告等に到達したことは本件記録に徴し明であり之によれば特殊清算人たる整理委員会は被告等に対し(イ)(ロ)の家屋が閉鎖機関たる原告の所有に属する旨主張し其の明渡を求めていることが明瞭であるから同令第十三條による解約申入の意思表示を爲したものと解するに十分である。然るに閉鎖機関令第十三條は同令第十二條の例外規定であつて、賃貸借に期間の定ある場合に於ても(期間の定なき場合は勿論)特殊清算人は借家法施行地域に於ては借家法第三條第一項に從い解約の申入を爲し得べき旨を規定し、借家人に対し約定期間の利益を奪うと共に予告期間を許與しているのであるから右令第十二條第十三條の趣旨に徴し同令第十六條等の規定を綜合して考えると同令が他の借家法の規定の適用を排除せんとする趣旨なること明である。從つて前記解約の意思表示により決定期間たる六ケ月の経過と共に昭和二十三年四月二十八日限り本件各賃貸借契約は終了したものと謂うべきである。此の点に付被告等は原告主張の解約申入に付ては本件家屋の明渡を得て之を換價し増收を爲すに非ざれば債務の弁済を爲し得ざる等清算の爲特に必要なる特別事由の存在を主張立証することを要する旨主張するけれども閉鎖機関令には右の如き特別事由を要するものとする何等の根拠なく同條は特殊清算人に対し同條所定の解約権を與えその行使を其の自由なる裁量に委ねたるものと解すべく、仮りに特別事由ある場合に限り例外として同條の適用を排除し得るものと解し得らると仮定するも、此の場合は之を主張する者に於て排除の事由を立証すべきこと同條の規定の体裁よりして明であるから被告の右主張は採用し得ない。而して閉鎖機関令は連合国最高司令官の要求事項を実施するため所謂ポツダム勅令(昭和二十年九月二十日勅令第五百四十二号)に基き制定施行せられたるものであつて、其の性格効力は法律と等しきものと解すべきであるから、閉鎖機関令第十三條が法律たる借家法第一條の二の規定を排除することは固より有効なりと解すべきである。果して然らば、爾余の判断を爲す迄もなく特殊清算人により代表せらるゝ原告に対し被告神保は別紙目録記載の(イ)の家屋を、被告浅野は別紙目録記載の(ロ)の家屋を夫々明渡し且つ本件(イ)(ロ)の家屋が前記市川名義を以て所有権移轉登記の爲されたる即ち原告の所有に帰したる昭和二十二年三月十二日以降賃貸借終了したる昭和二十三年四月二十八日迄被告神保は一ケ月金三十八円被告浅野は一ケ月金二十五円の割合による賃料並に昭和二十三年四月二十九日以降明渡済迄被告両名は夫々右賃料相当額の割合による損害金の支拂を爲すべき義務あるものと謂わねばならぬ。

仍て原告の請求は全部其の理由あるを以て之を認容すべく訴訟費用の負担に付民事訴訟法第八十九條を仮執行の宣言に付同法第百九十六條を適用し主文の通り判決した。

(裁判官 鈴木忠一 恒次重義 林信一)

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